2011年06月18日

キャンドルナイトと美術館

P1000221.JPG●2011年6月18日
一昨日、丸木美術館に行ってきました。
鎌倉から東京を通り越し、埼玉県東松山市にある美術館に到着するまでにおよそ3時間かかりました。
丸木美術館は丸木位里、俊夫妻による有名な「原爆の図」が常設されています。
ドキュメンタリー映画の中でしかその作品を見たことはなかったのですが、実際に作品の前に立ってみてその迫力に圧倒されました。
全15部の構成で、原爆投下直後の地獄絵が、人体の的確な描写と墨色の深さにより引き込まれるような画面に仕上がっています。
その中でも一番私の目をひいたのが第4部の「虹」という作品です。
濃い藍色が画面右手を覆い、そこにうっすらと虹の弧が描かれています。
まさか、原爆の図のタイトルに「虹」という爽やかな言葉が選ばれるとは思っても見ませんでした。そしてその作品説明を読んで愕然としました。
「(前略)……上空高くまで吹きあげられた煙とほこりが、
雲を呼び、やがて大粒の雨となって、
晴天のまっただなかに 降りそそいだのでありました。

そして暗黒の空に虹が出ました。
七彩がさんさんとかがやいたのでありました。 」
(原爆の図 第4部 《虹》注釈より抜粋)
この虹は「黒い雨」の降った後の虹だったのです。あのサダコちゃんが浴びて原爆病(白血病)になる切っ掛けになった放射性物質の濃縮された雨粒。
その忌まわしい雨にも自然はきれいな虹を描かせたのでした。
自然には善も悪もなく、人間がその下で右往左往しているだけ。
汚染された雨を降らせたのは、原爆をつくり、落とし、そしてその惨劇の切っ掛けを作ったちっぽけな人間の争いでした……。


呆然としたまま2階の展示室を降り、特別展を観にいきました。
今回は緊急開催として「チェルノブイリから見えるもの」が企画されていました。
『風しもの村 チェルノブイリスケッチ』を中心に展示された画家、貝原浩氏の作品は絵巻の様に村の風景を、生活を、そして人々の表情を活写していました。ただ、村人達の明るい笑顔の裏には間違いなくあの「チェルノブイリ原発事故」という重い問題がのしかかっているのです。それを思う時、普通の暮らしがいかに尊いものかを実感しました。
(貝原さんは2005年6月30日に耳下腺がんで亡くなっています。享年57歳)
また、写真家で映画監督の本橋成一さんの被災地ベラルーシの写真、フォトジャーナリストの広河隆一さんのチェルノブイリと福島の写真が展示されていて、過去の悪夢を繰り返してしまった現在に、なんともやりきれなく、また現在進行形で進んでいる福島の現状に薄ら寒い戦慄を背中に感じました。
目の前に映し出された絵画や写真には、それを伝えるに余りある力を持っていたのでした。

重い気持ちで丸木美術館を後にして、その夜はジムネット(日本イラク医療ネットワーク)のキャンドルナイトに参加するために東京・高田馬場に向かいました。

広島に落とされた原爆の火を今に伝え、毎年各地で開かれるキャンドルナイトの種火となるのは、福岡県星野村に持ち帰られた原爆の火です。
憎しみの火種として当時保存された火は、今では平和への架け橋として伝えられることになりました。
いくつものロウソクが用意され、テーブルを囲んで時間が来ると部屋の電気が消えました。蛍光灯の下、燃えていたロウソクは取るに足らない小さな明かりでしたが、真っ暗になった時のあたたかそうな紅い火はとても頼もしく感じるのでした。明かりが消えてろうそくだけの暗さに目が慣れると皆の表情にはフッとちいさな笑顔が浮かびました。
ロウソクを見ながら、自己紹介をして、原爆の火の由来の話を聞き、それぞれが自由に思っていることを話し始めました。
今回は福島の被災地にボランティアで参加した人も多く、避難所の現状や今後の見通し、これからできることなどが話されました。
その中でも一番大きな話題はやはり原発のこと、そして放射能汚染のことでした。
ここは内閣執務室ではないので、皆の意見や話したことがそのまま実行されるわけではないのですが、思い思いの意見を丁寧に聞くことはとても大切な事でした。
皆が皆たいへんな不安を抱えているのです。
予定されていた時間を1時間以上も過ぎ、ロウソクが燃え尽きるまで話しは続くかのようでした。

ロウソクに灯された小さな火はあたたかくゆらめき、その日そこに集まった人たちにゆったりとしたひと時を与えてくれました。
posted by 虹基金事務局 at 12:52| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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